2009年12月12日土曜日

凍  沢木耕太郎

 自分自身、登山はしないし行こうとも思わないのですが、ひとの登山記は大好きです。小学生時代に図書館で借りて読んだウインパーのマッターホルン初登頂の本がきっかけだと思うのですが、とりわけ険しい壁に張り付いて様々な装備を駆使してスリリングに且つストイックに挑戦する話に心を惹きつけられるのです。

 似たような冒険には、ヨットの世界一周や、砂漠横断マラソンなんかがありますが、山、しかも冷たい氷に覆われた岩山が舞台だと一層興味をそそります。自分がスキーをするからそう思うのかもしれません。

 この著者の作品の中でも特にスポーツ関連のルポが好きで、おそらく発行されたものは全て読んでるはずです。これらに一貫してるのは、状況をありのままに淡々と描写し、不思議な静けささえ漂っているにもかかわらず、知らず知らずのうちにリアルな興奮に包まれる点です。過度に煽り立てるような演出は皆無です。

 「凍」もまた、過酷なアタックと絶望的な状況へ追い込まれるさまが粛々と描かれており、久しぶりに「沢木ワールド」へ引き込まれてしまったのでした。

  


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