2010年8月30日月曜日

一瞬の風になれ  佐藤多佳子著    講談社文庫

「日がだいぶ傾いてる。この夕方に近い時間帯がリレーの決勝タイムだ。晴れがましい時間だ(第二部 P95)」

「それは突然だった。ほんとうに突然やってきた。自分でも理解できなかった。第4コーナーをまわったあたりだった。身体からいっさいの力が抜けたように感じた(第3部 P255)」


リアルです・・・。

自分は中学から社会人2年目まで陸上部に属し、はじめの2年を除いて専門は短距離走でした。もう走らなくなってから随分時間が経ちましたが、この本を読み進めていくうちに当時の様子が鮮やかに思い出されました。

私自身この物語に登場する選手たちのような実力は無く、個人での華やかな実績はありませんが、高校時代は1つ上と下に全国大会レベルの選手がいて、そんな彼らと一緒のリレーメンバーになれたことで、県大会を勝ち抜き東海大会を経験することができました。
その大舞台では舞い上がってしまい、いつもより全然遅いタイムで惨敗したのですが、そのときの様子がまる写しされたかのように描かれてました。

試合や練習を通じて、タイムが上がることだけでなく、人間的にも成長していく過程が自然体でさわやかに描かれおり、思わず彼らの仲間に入れて欲しい思ってしまうほどです。

「コース」が「レーン」に、「ゼッケン」が「ナンバーカード」に呼び方が変わっても、今も昔も高校の陸上競技部で奮闘する選手の思いは、変わらぬ普遍的なもののようです。なんか嬉しいですね。



明日で8月も終わり。まだまだ暑い日々は続きますが、この本を読んでいた数日間は、まるで主人公たちと一緒にこの夏を戦い続けたようでした。そして読み終わった今、夏が終わってしまったような少し寂しい感じがします。

主人公たちの、その後が気になります。


☆☆☆

0 件のコメント: